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山口地方裁判所 昭和30年(行モ)2号 決定 1955年3月22日

申請人 原田教

被申請人 山口県公安委員会

主文

本件申請を却下する。

理由

申請代理人は、被申請人が昭和三十年二月十日附をもつてなした、申請人の運転免許(普通自動車免許第七〇四号及び自動車三輪車免許第八二三号)を昭和三十年二月十四日から同年五月十四日まで九十日間停止する旨の行政処分の執行を本案判決の確定に至るまで停止するとの裁判を求め、その理由とするところは、右運転免許の停止処分は申請人が昭和二十九年十月十九日十二時四十分頃飲酒酩酊の上普通貨物自動車を運転し宇部市藤山区藤曲においてタクシーと衝突事故を起しタクシーの運転者松谷民夫に対して全治十日間の傷害並びに物損二十五万円相当の損害を与えたことを理由とするものであるが、当時申請人は飲酒酩酊しておらず右事故は全く相手車の運転者の過失によつて惹起されたものであつて申請人に何等の故意過失はないから右の事故を理由に申請人に対して本件停止処分をなすのは違法である。よつて申請人は昭和三十年三月八日山口地方裁判所に本件運転免許停止処分の取消を求める訴を提起した(同庁昭和三十年(行)第五号事件)が、前記運転免許停止期間が満了してしまうと本案判決に重大な影響があり、且申請人は昭和二十九年十一月二十日勤務先であつた宇部商事株式会社から解雇された身で更に今回本件停止処分を受けたため自動車運転者としての収入を得るに途なく現に生活に困窮しているので、このまま右停止期間を経過することは申請人にとつて償うことのできない損害を蒙むるものというべく、本件処分の執行を停止しても何等公共の福祉に重大な影響を及ぼす虞もないから、本件申請に及んだと謂うにある。

しかしながら申請人の主張並びに疎明によつては末だ前記期間運転免許の停止により生ずべき償うことのできない損害をさけるため緊急の必要があるとは認め難い。よつて本件申請はこれを却下すべきものとし主文の通り決定する。

(裁判官 河辺義一 藤田哲夫 野間礼二)

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